電気電⼦通信⼯学科 座談会 電気電⼦通信⼯学科 座談会

つながる時代には、
「つなげる人」 が要る。

現代の複合的な課題を解決できる技術者を育成するために−若手教授陣による座談会−

Vol.04

先駆的な研究、「つなげる人」を生み出す人材育成

次に、電気電子通信工学科の研究や人材育成について教えてください。

岩尾

電気電子通信工学科では、先駆的な研究、「つなげる人」を生み出す人材育成を図ります。そして、社会変革のリーダーを育てる取り組みを行います。

澤野

ナノエレクトロニクス分野では、ナノエレクトロニクス研究室、フォトニクス研究室があります。

 

ナノエレクトロニクス研究室(小長井 誠 特任教授、野平 博司 教授、澤野 憲太郎 教授、星 裕介 准教授)では、エレクトロニクスの持続可能な発展のための研究を進めています。本研究室で研究している新しいデバイスが完成すれば、現在世界中の人が利用している電子機器の中に組み込まれ、また家庭の太陽電池にも導入されます。目に見えないところで、エコな社会の実現に貢献することを目指しています。そして、今後数十年の情報通信、エネルギー技術の発展を目指しています。今日の情報量の爆発的増大によって、消費電力の膨大化が世界的に問題となっています。私たちの開発する新しい半導体ナノデバイス、パワーデバイス、太陽電池によって、AIやIoTの基盤となるデバイス技術の革新、世界中のエネルギー消費問題の解決を目指しています。

 

フォトニクス研究室(瀬戸 謙修 講師)では、ハード・ソフトの効率的な設計技術の研究開発を行っています。私たちは、コンピュータやLSIに関する社会に役立つ研究開発を推進しています。研究室での研究成果は実社会で直接役立ちます。そのため多くの企業からニーズがある研究テーマです。共同研究を行い、企業からの一流の技術者の方と開発に取り組むことで、開発現場で実際に使ってもらえる技術を開発しています。そして、より快適、安全で、楽しい未来を目指しています。スマートフォン、自動運転、ロボット、インターネットなどによって、私たちの暮らしは、以前よりも快適、安全で、楽しく進化しています。研究中の研究により、まったくあたらしい製品・サービスを生み出す土台を作り、社会を一層進化させることにつながります。

平野

通信システム分野では、通信システム・佐和橋研究室、通信システム・平野研究室、通信信頼性研究室、通信システム・柴田研究室、通信システム・傘研究室があります。

 

通信システム・佐和橋研究室(佐和橋 衛 教授)では、移動通信方式、無線通信方式に関する基盤技術の開発を行っています。移動通信・無線通信のキャリア、及び装置を開発しているメーカーとの共同研究を通して、実用システムに貢献できる基盤技術の研究を行っています。また、無線ネットワークエンジニア、及びネットワークを基盤とした様々な企業で活躍できる人物を育成しています。そして、低コストなブロードバンド無線ネットワークの構築を目指しています。低コストなブロードバンド無線ネットワークの構築日常生活に役立つ情報をいつでも、どこでも低コストで手に入れることができるブロードバンド無線アクセスネットワークを構築することにより、利便性の高い社会の実現に貢献します。

 

通信システム・平野研究室(平野 拓一 准教授)では、次世代小型無線機およびネットワーク技術の研究を行っています。私たちは、共同研究および展示会への出展を通して産業界の方々と情報交換し、実用化に向けて、真に社会に役立つ技術の開発を行います。また、国内外の研究者と補完しあいながら協力して研究を進めます。そして、電波技術を活用してより豊かな未来を目指します。電波の医療応用で診断を痛くなく、手軽に行えるようになります。また、小型無線機はセンサ情報を効率よく集めることができるようになります。自動化を進め、単純作業から解放されてより豊かな生活が可能になります。

 

通信信頼性研究室(林 正博 准教授)では、信頼できる通信ネットワークの実現法の研究を行っています。私たちの世界は、通信ネットワークに深く依存しています。このような依存の下では、故障によって通信が利用できなくなったとき、我々の生活は大きなダメージを受けます。本研究室の研究は、故障発生によるダメージを小さくする合理的な方法と効果的なセキュリティ対策を確立し、安心・安全な社会の実現に貢献します。そして、ユーザー満足度の高い通信サービスの実現を目指しています。故障とセキュリティに対して多様な考え方があります。信頼性が低くても安ければよいと考えるユーザーもいることでしょう。様々なユーザーの立場から見て満足度の高い通信サービスを実現し、快適な暮らしが実現される未来を目指します。

 

通信システム・柴田研究室(柴田 随道 教授)では、通信システムを支える回路技術とその応用の研究を推進しています。社会が要請するアナログ技術の基礎力と実際的な知識、回路からシステムまでの応用力を身につけることができます。企業との共同研究、業界の展示会への出展、学会活動などを体験できる機会を設けており、総合研究所(未来都市研究機構)での学際的な研究機会もあります。そして、豊かな生活や新たなユーザー体験を生み出す技術の創出を目指します。あらゆるものがネットワークにつながることで、豊かで生産性の高い生活や新たなユーザエキスペリエンスが創出される社会の到来が予見されています。IoT(インターネットオブシングス)時代に向けた技術革新と応用研究を担うことで、自らの未来を切り拓く活動を推進します。

 

通信システム・傘研究室(傘 昊 准教授)では、IoT社会基盤の大規模集積回路最新技術の開発と応用の研究を行っています。IoT社会基盤を築くために、集積回路が多岐にわたり応用され、インタフェース回路の高精度化と低消費電力化は益々要求されます。研究室で開発したナノテクノロジで実現するAD変換器回路の高精度化技術と低消費電力化技術は産業界に注目され、実用化に向けて着々と取り込んでいます。そして、人工知能による集積回路設計の実現を目指します。アナログ・デジタルが混在する多機能信号処理用LSI設計技術の発展に向けて、人工知能による集積システム開発環境の基盤を構築し、高機能集積回路の設計効率向上を目指して、人工知能を組み込んだ次世代集積システムを開発します。

鈴木

電気機器分野では、モータドライブグループ、システム制御グループ、電磁システムグループがあります。

 

電気機器研究室(モータドライブグループ: 百目鬼 英雄 教授、鈴木 憲吏 准教授)では、電気自動車から家電まで幅広いモータドライブの最先端研究を行っています。社会で最も注目されている分野であり、企業との共同研究として研究テーマを遂行する場合が多く、社会で活躍する一線の技術者と対等に議論する力が養えます。また、素材メーカーとの交流も多く、新しく開発された最新鋭材料をモータに適応する研究など最新の技術開発と深くかかわっています。そして、省エネルギーな社会の実現を目指します。省エネルギーな社会の実現低損失なモータやインバータの開発、高効率な駆動法は、低炭素社会の実現に必要不可欠な技術です。私たちの研究は、交通インフラ・再生可能エネルギー・メカトロニクスの発展を支援し省エネルギーな社会の実現につながります。

 

電気機器研究室(システム制御グループ: 中川 聡子 教授)では、高度な制御技術で、電気機械と人との接点に挑む!研究を行っています。社会が求める安全性。超高層ビル用エレベータの「安全」を追求します。諸外国の猛追をかわすには製品の高品位化。日本の誇る鉄鋼業において、鋼板の表面劣化を阻止します。少子高齢化社会が抱える介護問題。食事支援用の優しいロボットハンドを作ります。そして、人にやさしいものつくり!を目指します。人あってのものつくりです。安全で安心な製品、高品質な製品、人にやさしい動きをもたらす製品、物つくりに終わりはありません。難しい制御技術を駆使しながらも、人にはやさしい物つくりを目指します。

 

電気機器研究室(電磁システムグループ: 鳥居 粛 准教授)では、リニアモーターカーを支える様々な技術の高度化を目指します。広い意味で産業応用機器分野であるため、電気機器のみならず、機械・建築・都市システム等に幅広く用いられる技術に関連しており、応用先も幅広くなっています。そして、さらに先をゆく技術を研究し、エンジニアを育成します。リニアモーターカーは、十年後には東京-名古屋を結ぶ大都市間の大量輸送交通機関として、現在建設が進められています。その技術の先を行く、さらに未来の技術を目指して、毎週の研究ミーティングで中身の濃いディスカッションをしながら研究を進めます。教員の指導や学生相互の提案を取り入れつつ、自分で考える力を養い、社会に適応しつつきらりと光るエンジニアを育成します。

岩尾

電力エネルギー分野では、電力システム研究室、電気応用研究室、大電流エネルギー研究室があります。

 

電力システム研究室(中島 達人 教授、太田 豊 准教授)では、再生可能エネルギーと調和するスマートな電力システムの研究を行っています。再生可能エネルギー、電気自動車、電力システムの分野は、技術の裾野や業界も多岐にわたり、国や産業界主導のプロジェクトも多く見られます。電力システム研究室は、多彩なプロジェクトに積極的に参画し、豊富なアイデアやチャレンジングな研究の成果を広く情報発信しています。そして、ライフスタイルと都市環境の革新を目指します。ライフスタイルと都市環境の革新を見据えています再生可能エネルギーは環境負荷が少なく安全なエネルギー供給に、電気自動車は大気汚染や騒音が無い都市環境に直接的に貢献することができます。エネルギー供給、ライフスタイル、都市環境を“スマートシティ”へ革新させる未来を見据え、日々の研究に取り組んでいます。

 

電気応用研究室(江原 由泰 教授)では、高電圧技術により持続可能な社会を目指す研究を行っています。放電プラズマを応用して革新的な電気集じん技術を開発し、実際の高速道路トンネルに設置されています。現在、海洋汚染問題の解決策として船舶の排ガス浄化装置や、中国で問題視されているPM2.5を捕集する革新的な装置を、企業との共同研究により製品化を目指しています。そして、放電プラズマ技術で環境汚染物質をゼロエミッションを目指します。放電プラズマ技術で環境汚染物質をゼロエミッションPM2.5などの大気汚染は、深刻な社会問題となっています。このような人類の最終課題に対して、放電プラズマはクローザとして期待されています。独自に開発した技術により、環境汚染物質のゼロエミッションが可能となり、持続可能な社会の確立を目指しています。

 

大電流エネルギー研究室(岩尾 徹 教授)では、電流の発生や輸送から、放電プラズマの応用までの研究を行っています。大電流技術は、電力の発生から輸送、放電プラズマ応用の利用において必要不可欠な技術であり、私たちの生活を支えています。これら基礎研究にて培われた技術を活かし、活発に企業とプロジェクトを組み、産学連携や共同研究を行うことで、社会に貢献する取り組みをしています。そして、人々が安全安心に暮らせる豊かで快適な社会を目指します。停電のない安定した電力の供給、倒壊の恐れのない建物、エコで安全な廃棄物処理やリサイクル、鉄道の安全走行、高輝度なランプ、効率の良い電気推進、高融点材料による表面コーティング、核融合発電など、人々が安全安心に暮らせる豊かで快適な社会につながる研究を行っています。

こう考えると、今回、電気電子通信工学科に進化することは、時代を先取りすることになりますし、本当に現代の複合的な課題を解決できる技術者を育成する内容なんですね。総合研究所と4つの分野がリンクし合いながら、複合的な課題を解決していくことは、次の私たちの暮らしを支える上で、大変重要なことですね。

 

あらためてみますと、エレクトロニクス分野、電気機器分野、電力エネルギー分野に、通信システム分野を加え、エネルギーから情報ネットワークまでを統合した4分野14研究室が、学生の皆さんに向け、電気電子通信という幅広い学びを提供し、先駆的な研究、「つなげる人」を生み出す人材育成と、社会変革のリーダーを育てる取り組みを行う意気込みが伝わってきます。

鈴木

前回もありましたが、この分野の人材は、「電気電子通信」というなんでも幅広く学べる大型学科でなければ、育成は難しいですね。ここに目を付けた、東京都市大 電気電子通信工学科は、先駆的です。AIもロボットも、結局、「計測」「通信」「制御」が基本ベースですから。

 

まさに、当電気電子工学科は、情報通信工学科のDNAを融合して、電気電子通信工学科に名称変更、進化させる理由はここにあるわけです。専門領域・分野を広く網羅した、電気関係学科では日本最大級の150名の大型学科とする狙いは、ここにあります。

ありがとうございました。先駆的な研究をしており、「つなげる人」を生み出す人材育成をしている学科なのですね。新入生の皆さんにとっても、興味が持てる内容ですし、幅広い内容を学べますので、自分の将来にとっても有意義で、成長できる学科ですね。それでは、次に、電気電子通信工学科の教育面の充実、学生の活躍について、お伺いしたいと思います。

(月1回配信。来月につづく)